公司 今回読み返して改めて思った。やっぱりこのエッセイは、所々オブラートに包んではいるけど、相当に手厳しいね。
ゆき 例えばどこ?
公司 特に後半のここから。
外国に行くとよくわかることだけれど、ろくに言葉が通じなくても気の合う人間とはちゃんと気が合うし、どれだけ言葉が通じても気の合わない人間とはやはり気が合わない。P155
ゆき そりゃそうだ。
これはもう自明のことなのだが、今の日本の圧倒的な英会話フィーバーの渦中では意外に忘れられているような気がする。
会話にはもちろん技術が必要だけれど、まず自分という人間の手応えというか存在感がなければ、それはただの構文と単語の丸暗記に終わってしまう。そしてそういう会話力はどれだけ意味が通じてもそれより先にはまず進まないし、そういうタイプの広がりのない会話力を僕は全然好まない。P155-156
公司 外国語で話せるかうんぬんの前に、わたしの会話には自分という人間の手応えがあるのだろうか。それってかなり本質的な問いかけじゃない?
ゆき うん結構言うね。
公司 それはその通りだもの。
ゆき そうだね。
公司 でもそんなこと言ったら、「自分という人間の手応え」がないままに数学を学ぶ、理科を学ぶ、歴史を学ぶ、政治経済を学ぶ…。ほとんどの勉強に言えちゃうんだけどね。
ゆき あぁそうか。
公司 自分の「手応え」を持って臨めば、外国語は流暢でなくてもコミュニケーションは充実する。同じように学びも仕事も、自分の文脈に絡めて、必然として体得出来るんだろうね。
ゆき なんか上手くまとまった気がする。
公司 そう?笑
ゆき うん。
公司 「英語は重要だ」という人は今も昔も大勢いるけど、そんな人達とぜひシェアしてみたくなるエッセイだね。
ゆき うん、皆がどんな感想をもつのか私もすごく興味深い。実際に公司さんは家庭教師先でシェアしたんだよね。
公司 そう去年の夏、ゆきに『CAN YOU SPEAK ENGLISH?』を教えてもらった翌週に。英語が苦手な中学生の男子と彼のお母さんとね。
「外国語を覚えるには、人それぞれの環境的な必要性や自発的な好奇心が大事です。それなくして英語の習得を一方的に子供に課すのは、そもそも不自然な学び方であって、イケてないのかもしれません」
「実は英語が嫌いなのではなく、学校の管理的な勉強スタイルが自分の性に合っていないだけだったりして。だからあんまり気にしなくても大丈夫ですよ」
「ちなみに日本を代表する小説家で翻訳家でもある村上春樹さんはそんなことを言ってたんですね。この本で。僕もそう思います」
みたいな感じで紹介した。
ゆき へぇー!反応は?
公司 言われてみればそうだよね!ってお母さんは合点がいった様子。何よりも本人の焦りや不安が少し軽くなってくれてよかったよ。
ゆき それはよかったね。
公司 あれから一年経って、今も苦手なのは変わらないけど、その頃よりずっと前向きに勉強できてる。ゆきのおかげだよ。
ゆき えへ。さすがわたし。
公司 うん!そしてさすが村上春樹さん。
ゆき だね笑
< おわり >